医療プレイのススメ-第7回/神田つばき

「最も危険なオナニスト~ボクぐるぢいの編2」

 窒息プレイをしたことのある人は、誰でも守っていると思う大原則。

「窒息プレイは必ずパートナーのいるところでやりましょう」

 当たり前といえばあたりまえです。どんなにプレイに慣れているつもりでも、窒息すれば脳に酸素がいきわたらないのですから、ふだんはできる判断ができなくなっちゃいます。また、足が届く場所で溺れる人がいるように、パニックも起こします。
 私も10年位前は、自縛して、自分の顔をガムテープで巻いて、その姿を鏡に映して悶えたりしていました。ガムテに細くすきまを開けておいて、そこから鏡をヲチするのです。 こういうことって一人ですると、際限なくエスカレートするものなんですよね。私も興奮して巻いてしまって、髪の毛を切らなければならなくなったり、テープをはがすときにまつ毛をごっそり抜いてしまったりしていましたよ。そんな経験から、

「窒息さん、危険だからもう窒息オナニーはやめてください」

 と、声をいからせて忠言申しあげるのですが、

「どっかにいいパートナーいませんかね、ニャハハハハ」

 と、何度も危ない目に遭っていながら、窒息さんは全然懲りていないのです。たしかにパートナーがいれば、不測の事態におちいっても、助けてもらえます。変態プレイの装置を作るまえに彼女を作ればいいのに、…でも、それは凡人の思うこと。
 窒息さんほどの筋金入りの変態さんは、先に装置を作って、そこに嵌めこめる人間を探すのです。ある意味、ちょと怖いです。
 実は、窒息さんには昔、彼女がいました。

「大した変態プレイしてないんですけどねー。縛ったぐらいで」
「あら、そうだったんですか?」
「縄じゃなくてビニール紐でグイグイ縛ったら、痛いって大泣きして、それきりフラレちゃいました」
「……。それは、やはり加減して縛らないと」
「自分で自分を縛るとき、それぐらいやらないと気持ちよくないんで」

 それは女の子も、痛いだけでなく怖かったんじゃないでしょうか。しかも、窒息さんは反省も後悔もしていないみたいなのです。最初に自分のやりたいことがあって、道具を用意して、そこに生身の女の子を嵌めこもうとしたら逃げられちゃった…と、むしろ災難のように感じているみたい。
 独走ぶっちぎりオナニストぶりも、ここまで来ると(注意しようと思っていたのに忘れて)感心しちゃいます。窒息さんの人生の最高の目的は、窒息をふくむ変態プレイにあるので、それ以外のことはオマケみたいなものらしいです。
 窒息さんは半年ぐらいで会社を辞めては、しばらく療養とか言って家にいて、また就職しては半年ほどすると辞めてしまいます。何か技術を持っている人らしく、何度でも仕事は見つかるのです。
 地方に住み、親所有の土地に自分のお金で家を建てて一人で住み、できる限りの時間を作っては変態活動に没頭する…そう、窒息さんは一人王国の王なのです。ある意味、個人主義の究極だし、人間の理想を実現しているとも言えます。そして、誰にも迷惑をかけていないのです。
 しかも、彼の窒息プレイは非常に個性的なものです。バキュームラックなど見向きもしません。

「園芸用シートって知ってます? あれ、大きくて加工しやすくていいですよ」

 窒息さんは2m×4mのポリエチレンシートを使って、自分が入るコクーン(繭)のような袋を作ってしまうのです。私も全身タイツにはまったことがあるので、コクーン願望はよくわかるのですが、窒息さんがコクーンにおさまっているだけで、おとなしくしているはずがありません。

「アソコに電気マッサージ器を巻きつけて、それから外に電気掃除機をおいて、ホースをシートの袋の中に入れて…」

 ぎゃあああああ! 来たーっっっ! お仕事とは言え、これ以上は聴きたくないんです。絶対、危ないことをしたに決まっていますから…でも、それは私の想像をはるかに超えるお話だったのです。(次回に続く)