「最も危険なオナニスト～ボクぐるぢいの編４」
たかがオナニー、とノーマルセックスしか知らない人は思うのでしょう。それがヘンタイさんのワザとなると、舞台装置も脚本もあり、公演を重ねるごとに大掛かりになっていくことは、ユリイカに集う皆さんならよくご存知のことでしょう。
「気を失うとき、目の前が真っ暗になって、オバケがたくさんおいでおいでしてるのが見えましたよ」
「…」
「前にも見たことあるんですよ、えっとね…」
窒息さん。それはオバケじゃなくって死神だから。わざわざ見なくていいものだから。
私のサジェスチョンは全然聞き入れてくれず、一方的に聞き手に甘んじさせられて、私は思いっきり不機嫌になります（ほんとうは相談員がムクれてはいけないんですけどねー）。でも、何だか疲れて私がだまりこんでいると、窒息さんはどんどん上機嫌になっていくのです。
むしろ、いやがっている私の反応を楽しんでいるような…。ハッ？！ もしかして私、窒息さんに遊ばれてますッ？ もしかして、もしかして窒息さんって「身体はマゾだけど、心はサドなの♪」という、ちゃっかりしたタイプなんじゃないでしょうか…。
死の淵見えたかな♪ ぐらいまでプレイして身体を満足させたあと、びびり屋（三年も相談続けていれば私の性格もまるバレ）の私に強制的に聞かせて、精神的にいじめて楽しんでいるのではないかしら…？
おそるべし、窒息さん。オナニーと言えども、彼の行為に過剰に反応してくれる私という相手がいる以上、これはりっぱなプレイになっています。
オナニーして、私に話してびびらせて。最初はＭで、最後はＳで、一粒で二度美味しい窒息プレイを彼は毎月楽しんでいるわけなんですね。ああ、私ってば「生きて、しゃべるオナニー道具」として、窒息さんにうまーく使われていたのですわ。きー、悔しいぃ。
ああ、でもこの人、彼女ができそうだって言ってたんだわ、と気を取り直した私。
「そうそう、初デートの準備はできましたか？ お食事するお店とか決めました？」
「あー。俺、外食嫌いなんすよ。だから家で俺が何か作って食べさせればいいでしょ」
いいでしょ、って…。初デートって、ふつうお茶とかお食事とか楽しむものじゃないんですか？ それとも、さっさと餌をやって、すぐにプレイに突入、なんてもしかして考えてます？
「え。やっぱダメですかねえ？」
うわーん、だから彼女というのは、窒息さんの脳内劇場の小道具じゃないんですってば。生きて歩いて考えたり夢見たりしているんですってばー！
月に一度の窒息さんからの相談電話は、私をハラハラさせまくりながら四年目に突入するのでありました。